翌朝、チェックアウトが遅めに設定されていたので僕は朝風呂に浸かろうと大浴場へと2012
向かった。ゆっくり温泉を楽しんでから脱衣場で着替えとしているとそこに父が現われ
る。どうやら母も一緒に部屋を出たとの事で、しかも部屋の鍵を母が持ったまま女性用
の脱衣場へ入ってしまったらしい。仕方がないので僕は日帰り入浴用の休憩スペース
で母が出てくるのを待つことにした。

畳敷きの休憩スペースからはフロア全体を見渡す事ができ、大浴場に出入りする人た
ちをはじめ、売店に出入りする人、フロントへと向かう人などの顔までハッキリと見ること
ができた。しかも団体客が殆んど出て行ってしまったこの時間帯はフロア自体が閑散と
していてロックオンした人間を見失う事なく行動を把握できるようになっていた。

こんな時にする事といったら一つだけ。「女性用トイレの滞在時間チェック」である。

何十分でも苦痛なく時間を潰せるのが良い。売店の向かいに男女別のトイレの入り口が
2つ並んでいた。脱衣場にもトイレはあるが設置位置から考えて本当に入浴者専用にな
っていたので事実上このフロアにはこの売店前のトイレしかない事になる。ホテルのこう
いったトイレは「うんこ率」が高い。部屋のユニットバスでのうんこを嫌う人たちがやってく
ることが多いからだ。このホテルの一般的な部屋に付いているユニットバスはかなり狭
い構造になっているうえに便器とドアが密着しているので「音」や「臭い」が部屋に筒抜け
だった。それが嫌で昨日の晩は僕もこのトイレをわざわざ利用しに来たくらいだ。

僕の座った位置からは女子トイレの奥までは見えなかったが出入りする人の顔はしっかり
と確認できた。前日にフロアの見取り図で確認したところ女性用の個室は4つあるらしい。
ここまで下準備が終わっていればあとは獲物が来るのを待つだけである。朝食後から出発
前までのこの時間帯はきっと利用者が多いはずだ。

そう期待はしてみたものの実際には殆んど人の動きがない。観察を始めてから5分が
経過したがトイレに向かった人は誰もいなかった。それどころかフロア自体の人の動きも
殆んどない状態だ。売店には何組かお客さんが入っていたがみんなトイレには寄らずに
去っていった。10分経過・・・エレベーターから家族連れが降りてきて売店の方へ歩いて
きた。30代後半と思われる夫婦に子供が3姉妹という構成で、お父さんが格好良かった
のが印象的だった。3姉妹は上から中学生、小学校高学年、小学校中学年といったとこ
ろか?全員柔和な顔立ちの可愛らしい娘たちだった。売店に向かう途中、3姉妹が進む
方向を変えトイレに入っていった。お父さんお母さんは売店へと入っていく。

計測開始。

しかしすぐに長女と思われるお姉ちゃんがトイレの入り口から出てきた。先程と違って
なんか凄い不機嫌そうな顔をしている・・・何があったんだろう?お姉ちゃんはそのまま
売店に入っていく。3分経過・・・下の娘2人がキャッキャいいながら走ってトイレから
出てきてそのまま売店に入っていく。なにがそんなに楽しいんだ?3分か・・・快便な娘
だったら十分にうんこが出来る時間だけど・・・おしっこかな? 売店の入り口近くで2人
の娘がお母さんとお姉ちゃんに何やらゴニョゴニョ耳打ちをしてはしゃいでいる。

入れ代わりにお母さんと不機嫌なお姉ちゃんがトイレに入っていった。

再計測開始。

下の娘2人がトイレの入り口を出たり入ったりしながら楽しそうに中の様子を窺ってい
る。売店からお父さんに声を掛けられると一旦売店に入って行くがまた直ぐにトイレの
入り口に立って2人ではしゃいでいる。3分経過・・・誰か出てきた。ん?

出てきたのはお母さんでも不機嫌なお姉ちゃんでもなく、上下をスーツでパシッとキメ
た20代後半のお姉様だった。キャリーバッグを引いている。添乗員?一人旅? って
ゆーか、何分トイレに入ってたの?僕がお風呂から上がって観察を始めてから20分
近く経っている。それ以降このトイレに入ったのは3姉妹とお母さんだけだ。そのお姉様
の姿に下の娘2人の興奮がマックスになった。あきらかに好奇の目を向けながら互いに
耳打ちをしながら大はしゃぎしている。お姉様もそれが分かっているらしく俯いたまま早
足でフロントの方へと向かっていく。ここでお父さんが売店から出てくると2人をたしなめ
るように一言二言声を掛けエレベーターの方へと連れて行った。その間も2人はお姉様
に興味津々で、結局エレベーターの中に乗るまで2人でヒソヒソと話しながら視線を送り
続けていた。いったい何があったんだ?

それからすぐ後、再計測から5分を過ぎたあたりでお母さんがトイレから出てきた。最初
からある程度の打ち合わせが出来ていたのか一度軽く売店の方を見ただけでそのまま
エレベーターに入ってしまった。

ここで大浴場から父が上がってきてしまう。なんだかんだ父が話し掛けて来るのが正直
面倒くさい。僕はいま不機嫌だったお姉ちゃんがいつトイレから出て来るのかが気になっ
てしょうがないんだ。父が話し掛けて来るのに生返事をして目線だけは女子トイレの入り
口に集中する。露天風呂がぬるかった話なんてどうでもいい。お姉ちゃんは出てこない。

最悪なタイミングで母まで大浴場から上がってきてしまった。朝風呂が気持ちいいのは
わかったからもう話しかけてくるな。僕はいまお姉ちゃんのうんこの時間を計ってるの!
「売店でも見ていこうか?」僕はそう言うとやおら立ち上がってできるだけゆっくりと売店
に向かって歩き始めた。再計測から8分が経っている。

父と母はお土産を物色中。僕は売店入り口近くの商品を見るフリをしながらお姉ちゃん
のうんこが終わるのを待っていた。

お姉ちゃんが出てきた。まぁ100%うんこでしょう。お姉ちゃんは一切売店の方に視線
をくれる事なくそそくさとエレベーターの中へと消えてく。計測終了。再計測からは12分
ちょっとが経過していた。

結局さっきの一家は売店で何も買っていないところを見ると、部屋のトイレを使いたくな
かったので売店を見る体でこのフロアのトイレを使いに来たようだった。

別に温泉ホテルでは有りがちな光景かもしれないけれど、僕みたいな変態をこじらせた
人間にとっては何か良いものを見たような気持ちにさせられる体験でした。

いつもながらアホな話で申し訳ないです。

でも、次回この件を検証しますw