いつものプライドの話とはちょっと違うかもしれないけれど・・・

今から7~8年前、僕は札幌の中心部に近い単身者用のマンションに住んで
いました。オフィス街が近かったせいなのかエレベーターなどで鉢合わせする
住民のほとんどが若い女性だったのをよく覚えています。

そんなある日の朝。

目覚ましで起きた僕はシャワーを浴びるためにバスルームに向かった。

(・・・ん?あれっ?)

蛇口をひねってもお湯が出てこない。いや、水すらも出てこない。
裸のままキッチンに向かいシンクの蛇口をひねるがやはり何も出てこなかった。

(えぇ~っ!朝から断水かよ!)

いつもなら管理人さんから事前に連絡があるはずなのに今回は何の連絡もき
ていない。もしかしたらトラブルなのか?僕はとりあえず服を着なおして一階の
管理人室へ行くことにした。

一階に着くと既に数人の住人が管理人さんと話をしていた。僕もその中に加わ
る。話を聞いているとどうやら機械的なトラブルで一時間前から水が止まってい
るらしい。朝なので業者と連絡がつかないらしく管理人さんが困り果てていた。

(う~ん・・・出社までに復旧は無理っぽいかな。)
(あっ、今日は下水管の定期点検の日じゃん!)

「管理人さん!今日って業者さんが部屋に来る日でしたよね?」
「はい。皆さんが不在の場合は私が鍵を開けて業者さんと一緒に部屋に入ります。」

下水管の点検の件は事前に通知が来ていたが、よりによってそんな日の朝に
断水だなんて・・・。

(ここで管理人さんと話しててもらちが明かないな。)

そう思って僕が部屋に戻ろうとエレベーターの前に立っているとマンションの入
口から誰かが入ってきた。何回か顔を合わせたことがある同じ階に住む若い女
の子だった。両手にコンビニ袋をぶら下げている。なぜか僕の顔を見て気まずそ
うな顔をした。お互い軽く会釈をして同じエレベーターに乗る。

(朝ごはんかな?・・・ん?・・・水?)

袋の中身が全部水だった。2リットルのペットボトルを片方に二本ずつぶら下げて
いる姿にちょっと違和感を感じてしまう。こんなにたくさんの水をいったい何に使う
んだろう? 

(きちんと髪はセットされてるし化粧もバッチリなのに・・・あっ!)

(もしかして・・・トイレ?)

歯を磨くのにこんなに大量の水は不要だろう。ここは単身者用のマンションなの
でたとえ彼氏や友達が泊まりに来てたとしてもこんな量は要らない。たしかにこ
れだけの量の水をタンクに入れさえすれば一回水を流せる量にはなるだろう。

(そうか、トイレを使って流そうとしたら断水で流せなかったんだな)

しかも今日は下水管の定期点検日。うちのマンションはユニットバスなので下水
管の点検はトイレの真横にある洗面台や床の排水口を中心に行われる事になっ
ている。たとえ流していないトイレに蓋をしたとしても業者にそれを開けられる可
能性はゼロじゃない。蓋をしてたってニオイは漏れてくる。

たぶん下水管の点検さえ無ければ流さないでそのまま出勤したってなんの問題
も無いだろうしこの娘もたぶんそうした事だろう。でも今日みたいに業者や管理人
さんがトイレの中まで入ってくるんだったら出勤前になんとか処理しなくちゃいけな
いって誰だって思っちゃいますよね。だって、じゃないと他人様にニオイを嗅がれて
しまうし・・・いや、最悪ブツを見られてしまう可能性だって・・・

(そりゃ水を買いに行っちゃうよなw 気付かないでトイレ使っちゃったんだこの娘。)

おしっこだったらペーパーを摘んで捨てちゃえばそんなに大量の水じゃなくても流
れていくだろうし・・・この娘きっとうんこしちゃったんだろうな・・・

っていうか、うんこぐらいするよな。自分ちなんだし(´・ω・`)

部屋に戻った僕は冷凍庫の氷をポットのお湯で溶かして歯を磨いてから出勤した。